目覚めると小雨が降っていた。
車は何台か停まっているが人影はない。
どこに行っているのだろう?
地元の人の駐車場になっているのかなあ?
疑問を感じながら、身支度をして岬の先端を目指し遊歩道を歩き始める。
冷たく激しい北西風が吹き顔も指先も冷たいが、歩いていると体は温まってくる。
すれ違う人も無く、道もそれほど荒れていないので、これならバイクでも来れたなあと思いながら
坂道を下って行くと、小さな船着き場とキャンプ場が見えた。
さすがに昨日の夜に、暗く狭いこの道を走るのは無理だったろう。
船着き場の突堤では二人の釣り人が荒れた海に竿を出している。
インディアンのテントが並ぶキャンプ場の先は、再び小さな山になり、その上に灯台がある。
四国最西端というのは地味な最先端ポイントだが、最涯感はかなり高い。
関アジ・関サバの漁場として有名な速吸瀬戸が目の前だ。
潮が川のように流れているのが一目で分かる。
灯台から駐車場を見ると、ずいぶん歩いてきたんだなあと実感する。
2年前には、すぐ近くまで来ながらブレーキトラブルで断念した佐田岬。
これで地味ながらも四国の東西南北端を制覇した事になる。
この地に立った瞬間、自分の中では十分な達成感があった。
駐車場に戻ると、設置したままのテントの横で、地元のおばあさんがミカンを並べ、魚を干していた。
この辺りで取れたミカンは格別だそうだ。
口車に乗せられて、千円で袋一杯のミカンを買い早速食べてみるが、なるほど”うまい!”
朝食もまだで、ちょっとした運動の後だから、渇いた咽に甘い果汁が染み込んでくる。
「皮はそこらに放って置けば自然に帰るから」と言う、ばあちゃんの言葉に従い、食べてはポイ
食べてはポイと立て続けに5、6個のミカンを口に運んだ。
テントを片づけながら、小一時間ばあちゃんといろいろなおしゃべりをした。
この辺の昔話、自分の子供や孫の話、現在の生活ぶり・・・
自分にとってはここが一番良いと誇らしげに言うばあちゃん。
停まっている車は、皆釣り人のものだと知らされた。
考えてみれば、自分もあちこち夜中に釣りに出かけては、夜明けを待って釣り場に入ったものだ。
なんだ、そうとわかっていれば何も不安に思う事もなかったのにと苦笑した。
そうこうするうちに雨がポツポツと落ちてきた。
「おまけするから」
小鯵の干物までまんまと土産に買わされて?そろそろ出発。
ばあちゃん言うには「この辺が雨だと大洲あたりは雪だろう」
不安が広がる。
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佐田岬
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佐田岬灯台 昔は灯台守が住んでいたが
今は無人灯台になっている |
灯台右側の岩場
墓石のようなものが見えたが |
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灯台に向かう遊歩道
木の幹には子供達の作った札が下がる |
インディアンのテントが並ぶキャンプ場
この時期は閉鎖中 |
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駐車場の奥は風裏で意外と寒くなかった
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干物を干すばあちゃん
でも雨が降ってきちゃった |
今日は四国を横断して、できるだけ徳島に近付くのが目標。
雪を避けて海沿いのルートを選ぶ。
佐田岬半島は日本一細長い半島と言われ、長さは50kmほどある。
岬の駐車場から走り始めるとすぐに雨脚が強まってきた。
途中で合羽を着込み三崎港まで来ると路面は乾いており、やれやれ雨は上がったと思ったのに、
その先の道の駅「瀬戸町農業公園」で朝食を食べている間に、無情にも再び冷たい雨が降り始めた。
雨に気勢を殺がれ、コーヒーをのんびりと飲みながらぐずぐずしていると、いつのまにかお昼近くに
なってしまった。
細長い佐田岬の背骨のような国道197号・佐田岬メロディラインは、トンネルが多く海はほとんど見えない。
八幡浜の手前で海沿いに抜ける国道378号と分岐する。
左に曲がり長い長い瞽女トンネルを抜けると目の前に穏やかな伊予灘が広がった。
うまく雨雲を置き去りにしたようで、雨はすっかり上がっている。
伊予灘の海岸線ぎりぎりに走る国道378号は夕やけ小やけラインと言うそうだ。
「親父が夕焼けでお袋が小焼けだったころ俺は霜焼けだった・・・いえぃー!」
なんか昔あったなあ ”松鶴家ちとせ” うん!知ってる人は知っている。
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朝昼兼用の食事はトンカツ定食
松山市内に入り高松まで国道11号で行こうと思ったが、高松までは150km以上ある。
高松から徳島までが100km弱。
前回は最終日に高松から徳島まで雪の中を苦労して走ったので、雪が降る可能性が高いこの天候では
少しでも徳島に近付きたい。
結局松山から松山道に入り時間短縮を目指すことにした。
松山道で順調に徳島までの距離を削りながらも、上がらぬ気温に体がどんどん冷えてくる。
松山から30分ほど走り、しまなみ海道との分岐点の先にある石鎚山SAに入ると、嬉しい事に温泉があった。
椿交流館「椿温泉こまつ」大人400円
早速タオル一つを持って温泉に直行。
ほかほかと温まったところで外を見ると雪がちらついている。
せっかく置き去りにした雪雲が追いついてきたようだ。
がっかりしてバイクに戻り再び合羽を着込み再出発。
松山道も山の中を切り開いて作った部分が多いので雪が降りやすいのだろう。
積もるほどではないがヘルメットのシールドに湿った雪が張り付いて視界を妨げる。
相変わらず全開走行を続けるとエンジンが吹けなくなり、ちょっと上り坂になると70km位しか出ない。
松山道から高松道と徳島道の分岐でどうするか迷ったが一気に徳島まで行く事に決めて徳島道に入った。
徳島道は片側1車線なのでスピードの出ないアヴェニスでは常に後続車を気にしなくてはならず結構気疲れする。
さほど交通量が多くないのが救いだが後続に2台、3台と付かれると追い越し車線のある場所までが
やたら長く感じられる。
脇町を過ぎたころにやっと雪は止み青空も出てきたが、そのころには日も暮れかけていた。
高速を降りて徳島市内に入った時にはすっかり暗くなっていたが、徳島は今回で3度目なので道もわかるから
落ち着いた気分で途中で予約したビジネスホテルに到着した。
買い物に出た徳島の駅前は戎神社の祭礼で道に夜店が広がり賑やいでいた。
笹の葉を持った人が行き交い賑やかな声が飛び交う。
東京で言うとお酉様みたいな感じだけど”えべっさん”は関西チックでいいなあ。
お祭りはその土地の特色をあらわしているから旅に来た実感が増す。
夜店では何も買わず冷やかして歩いて近所のダイエーで酒と食料を買って部屋に戻った。
明日の出船は11:30、一時間前に行けば十分でフェリー乗り場までは30分もかからない。
久しぶりに朝寝坊が出来る。
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徳島市街を流れる新町川はライトアップされていた
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