奈良・大分・四国 年越しツーリング

1月2日

第5章 九州最東端の岬を目指して





目覚めるとやっと窓の外には青空と日差しが戻ってきた。
今日は連泊なので荷物を積まずに身軽に動き回れる。
やっとツーリングらしくなってきたぞ。

  1階の居酒屋で朝食バイキングを済ませ出発だ。



午前中は海岸線を攻める。
四浦半島を一周し九州最東端に細長く伸びる鶴御岬まで行けば、九州本土も東・南・西を制覇
した事になる。
無論、北も押さえておきたいところだが北は門司の工業地帯で埋立地なのでわざわざ行く価値
があるのかどうか悩むところ。
まあ、ついでがあれば、という程度の場所だろう。

午後は原尻の滝、白水ダムを見てから大分市内でトランザルプ仲間のKajiさんと会う予定。
Kajiさんは現在埼玉県在住だが大分に自宅があり帰省中。
折角なので待ち合わせることにした。

まず四浦半島を一回り。
入り組んだ地形が続く半島は好釣り場として有名らしく、海岸には強風にもめげずに竿を出す
釣り人の姿がそこここに見られた。
フカセ釣りとルアーが半々くらいのようだった。

半島付け根付近の分岐で行き止まりではあるが赤崎という場所まで行ってみた。
残念ながら岬先端まで行く道は無く、小さな漁師町で道は終わり、海際の小学校の裏の堤防
まで歩いてここは制覇したことにした。

再び戻って県道611号は山間を上り、県道541の分岐から海岸線を縫うように半島の先端を
目指す。
半島の先端には保戸島があり、半島とはほんのわずかな幅の海で切り離されている。
ここならすぐに橋をかけられそうなのに目の前の島は船で行くしかないようだ。
そこそこの集落があるようで立派な建物も見える。

この地点はまさに紛れもない岬なのだが、ナントカ岬という名前が無いようなのでちょっと物足
らない。
岩場に遮られた岬の反対側を除くと四浦半島のもう一つの岬の蒲戸崎がまぶしい日の光に照
らされた海面の向こうに見える。


四浦半島
津久見湾
赤崎
入り組んだ四浦半島
半島内部の鉱山
保戸島
岬先端は殺風景な空き地になっていた
岩の陰から覗く蒲戸崎

ここからしばらくは来た道を戻り、県道541で半島の反対側に出る。
四浦半島は厳密に半島を一周する道はないので岬まではピストンになる。
また蒲戸崎へ通じる道は無いので遠くから眺めただけとなるが、毎度のことながら半島巡りは時間が
かかる。

半島は北側の津久見湾から南側の佐伯湾になり、湾の向こうには鶴見半島が霞んで見える。
鶴御崎も細長く続く半島を往復しなければならないので意外と時間がかかりそうだ。
ガソリンの残量が心配なので半島に入る前に給油を済ます。

岬到着は11時半。
岬周辺はアミューズメント施設として入場料を取っていたそうだが、観光客も少なく最近営業を停止して
無料開放されたようだ。
そんな経緯も景観もどこか大隅半島の佐多岬を思い起こさせる。

灯台の脇から岬先端に行く遊歩道があり5分ほど歩いた所に九州最東端の地の碑があった。
居合わせた家族と碑の前で写真を撮り合い、しばらく九州最東端制覇の感触を楽しむ。
目の前の豊後水道を挟んで四国まではずいぶん近くに見える。

明日は佐伯から高知県の宿毛までフェリーで渡る予定だが、この航路も一時は赤字で廃止になりかけた
ようで、この航路が無ければ別のフェリー航路を使っても相当の回り道になるので、存続には感謝しない
といけない。

灯台の下には戦時中の砲台跡が残っている。
30分ほどの間に訪れた観光客は10人弱で、ここが経営難になるのも無理はないと思った。
先端マニアにはたまらないが、細長い半島の道を延々走って灯台があるだけだから多くの集客は望め
ないだろう。
ここから見る海は最高なのだが。

戻る途中で600m離れた大島との間を流れる元の間海峡の写真を撮る。
小さな島との間の海峡だが大潮のときには2mもの潮位差が発生し鳴門のように渦潮が発生する
そうだ。

鶴御岬

やはり灯台は青空が合う
最東端への遊歩道
九州最東端に立つ
鶴御岬灯台
かつてはこのゲートから先は有料だった
元の間海峡

二つの半島を走り終えたので、ここからは内陸部に向かう。
原尻の滝に向かう途中にトトロのバス停があるので、そこを見ながら原尻の滝へ行くコースを選択。
道の駅「やよい」に立ち寄り昼食に名物のゴマ出しうどんを食べる。
ゴマ出しとはエソという魚のすり身に味醂と醤油を加えたもので、茹であげたうどんの中にそれを入れて
溶かしただけのシンプルなもの。

味は格別美味いとは思はなかったが、結構冷え込んでいたのでとにかくうどんの熱さがありがたかった。
そそくさと450円の安上がりな昼食を終えた。
この道の駅には温泉が併設してるので誘惑されそうになるが今日はまだまだ走らなくてはならず時間の
余裕はない。

トトロのバス停は分かりにくいところだが、こんな時こそナビが威力を発揮する。
まったく迷うことなく到着。
もともとトトロという地名だった事で、物語に関係が無い場所がトトロのバス停として有名になったのだが、
物語の舞台になったとしても何の違和感もないような雰囲気の場所で、非常にノスタルジックな気分に
なった。

もっとも映画を見ていない人間の言う事なので根拠は無い事を御断りしておかねばなるまい(笑)

ととろバス停

あごだしうどん

ここから原尻の滝までは県道とはなばかりの狭隘な山道をくねくねと走り抜ける。
1.5車線あれば上等でほとんどはガードレールのない谷を除く1車線の道で、軽でも離合は困難な道が
続くがすれ違う車も無いのでそれも杞憂だ。
紀伊半島で走った道を思い出したが、ここでもナビが行く先を示してくれ、いくつか有る分岐点でも迷わず
に済んだ。

やっと国道に出て原尻の滝に到着したのは15時近く。
徐々に日も傾き始め、それにつれて気温も低下してきた。

原尻の滝は開けた緩やかな川床が突然落ち込み扇状に落下する滝を形成していて、高さより幅が広い
その景観から東洋のナイアガラと称されている。
確かにナイアガラのミニチュアみたいには見えるが、同じような形状であれば富士の白糸の滝のほうが
美しいし、滝の上は道路になっているし正直あまり感動は無かった。

この道幅が一番マシなような県道45号
原尻の滝はもうすぐ
立派な石造りの橋
原尻の滝

東洋のナイアガラ
ここでKajiさんに待ち合わせ場所である九州石油ドームの到着予想時間をメールして、最後の観光
ポイントである白水ダムに向かった。

白水(はくすい)ダムは昭和13年に建造された堰堤であるが、なだらかな曲線を流れ落ちる水の美し
さは日本で一番美しいダムと形容される事もある位で、また国の重要文化財に指定されており文化的
価値も高い。

しかし大きな勘違いをしていたことをこの時は知らなかった。
実は白水(しらみず)の滝というのがあり、途中からその標識に従って走っていたのだ。
ダムとはいえ、その造形美から滝と呼んでもおかしくないのかなと独り合点していたわけだがおかげで
竹田市に入り標高がどんどん上がってくるといきなり前方の上り坂が凍結しているではないか!

道端や周囲の田畑に雪は残っていたので不安はあったのだが、平たんな場所ならともかく登り坂の舗装
路が全面凍結しているとは、バリケードに封鎖されたのも同然だ。

一瞬ためらったが、どう考えてもリスクが大きいので残念だが引き返すのがこの場合大人の判断だろう。
バイクを止めてユーターンしようとしたときにはすでに足元は凍結していた。
方向を変えるべく左に車体を傾け、それを支えるべく出した靴底は無情にも路面を薄く覆った氷で見事
に滑り、必然的に200kgを超すトランザルプの車体はさらに傾きを増した。

なんとかふんばろうとしたが、すでに限界を超えて傾いた車体を支えるすべはなく、バイクは静かに凍り
ついた路上に横たわった。
滑る足元でしかも坂道。
一人でバイクを引き起こすには条件が悪すぎる。
何度か試みるが引き起こせない。
その度に疲労と徒労感が蓄積する。

あきらめてしばし道端で息を整える。
寒さで凍えそうだった体が一気に汗ばんでくる。
しかしこれは後で一層体を冷やすのでやっかいなのだが・・・

しばらくすると坂の上から軽トラックが下りてきた。
気がついて路肩に車を止めると下りてきた老人と少年が引き起こしを手伝ってくれた。
完全に雪の無い場所までバイクを移動して、礼を言って過ぎ去っていくクルマを見送る。
ここまで来て残念だがあきらめて大分に戻ろう。

無念の撤退
九州石油ドーム
kajiさんと約束した時間も迫っている。
ノンストップで大分ビッグアイ、九石ドームの駐車場に急いだ。
日も暮れかけ気温はどんどんと下がってくる。
寒風が体温を一気に奪っていく。

九石ドームに着いた時は体の震えが止まらなかった。
kajiさんは奥さんと一緒にクルマで迎えに来て、すぐ近くの自宅に案内された。
そこにバイクを置いてクルマで温泉に連れてってくれるという。
この心底冷え切った体には、何物にも勝る御馳走だ。

大分道を走り別府の市街地へ下りる。
いくつかの温泉施設を物色しながら我々が辿り着いた浜脇温泉は正月とあって無料開放されていた。
もともとの料金も200円程度と格安な温泉天国別府だが、無料とは嬉しいじゃないか。



思う存分に熱めの湯で凍った体を溶かしていく。
流れを停めていた体内の血流が一気に動き出し、ポカポカした体はこのまま裸で表に出ても大丈夫では
ないかと思うほどに温まった。
再びkajiさんのお宅に戻りバイクにまたがると、御世話になったお二人に挨拶してホテルのある津久見へ
と高速を飛ばした。

帰省中の忙しい中、わざわざ時間を作って会いに来てくれたkajiさんには本当に感謝しています。
ありがとうございました。

ホテルに戻ったのは10時近かったが、このホテルは併設のジョイフルで深夜まで宿泊プランの夕食を摂る
事ができる。
しかし地元の青年の新年会の2次会が行われており、混雑している上にうるさいことこの上ない。
あまりに落ち着かないので早々に食事を切り上げて、部屋に戻って自販機で買ったビールを飲みながら
今日撮った写真の整理などをしてベッドに潜り込んだ。

明日は九州に別れを告げて午前中にフェリーで四国に渡る予定だ。


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